日本人は倹約遺伝子が多い?よく聞く話を研究で確かめる
2026年10月7日
文責: dNAXY neo 編集部(担当ペルソナ: 佐々木 英樹)
倹約遺伝子と呼ばれることのある ADRB3 の Trp64Arg という型は、日本人で持つ人の割合が比較的高いと報告されてきました。ただし、日本人6,582人をまとめた解析では、この型を持つ人と持たない人の BMI の差は平均 0.26 kg/m² と小さい値です。
「日本人は倹約遺伝子が多いから太りやすい」という話のうち、前半の割合は公開データで確かめられます。後半の太りやすさは、研究で見られた差の大きさを知ってから読むのが確かです。
倹約遺伝子という言葉
倹約遺伝子は、食べ物が少ない時代にエネルギーをためやすい体質が生き残りに有利だった、という仮説から生まれました。「倹約型の遺伝子型(thrifty genotype)」は、Neel が1962年の論文の題名に使った言葉です。倹約遺伝子は決まった1つの遺伝子の名前を指さず、ダイエットの遺伝子検査の説明では ADRB3 や UCP1 の型がこう呼ばれることがあります。以下で中心に取り上げるのは、日本人の研究が多い ADRB3 です。
ADRB3 の型を持つ人の割合
米国国立生物工学情報センター(NCBI)の dbSNP では、遺伝子の型ごとに、集団の中での割合を見られます。ADRB3 の Trp64Arg で、Arg の並びが全体に占める割合は次のとおりです。
| 集団 |
Arg の並びの割合 |
| 日本人(東北メディカル・メガバンク機構、約3万8千人) |
約19% |
| 日本人(1000 Genomes Project) |
約20% |
| 東アジアの集団全体(1000 Genomes Project) |
約13% |
| ヨーロッパ系の集団(1000 Genomes Project) |
約8% |
| アフリカ系の集団(1000 Genomes Project) |
約10% |
日本人の割合は、ヨーロッパ系やアフリカ系の集団の約2倍です。Kurokawa ら(2001年)の解析も、日本人はこの型の頻度が高いことを理由に、日本人の研究だけをまとめています。「日本人は倹約遺伝子が多い」という話は、ADRB3 についてはデータと合う内容です。
UCP1 では、日本人がいちばん多いわけではない
同じく倹約遺伝子と呼ばれることのある UCP1 の -3826A>G は、割合の並び方が違います。dbSNP のデータで、G の並びが占める割合は、日本人で約46〜49%、ヨーロッパ系で約24%、アフリカ系で約73%です。
どの型が多いかは、遺伝子ごとに集団によって違います。ある型が多い集団が、ほかの集団より体質として劣る、優れるという話にはなりません。型の割合は、その集団の中で研究の結果をどう読むかの前提の1つです。UCP1 の研究は「UCP1 遺伝子の多型(-3826A>G)と体重」で紹介しています。
BMI の差は平均 0.26 kg/m²
型を持つ人が多いことと、持つ人がどれだけ太りやすいかは別の問題です。Kurokawa らは、日本人の35の研究グループのデータ(型を持つ2,316人、持たない4,266人)をまとめました。BMI の差は平均 0.26 kg/m²(95%信頼区間 0.18〜0.42)です。
身長158cmの人なら、0.26 kg/m² は体重で約0.65kgにあたります。差があることは統計で確かめられていますが、一人ひとりの体型を分けるほどの幅ではありません。日本人の研究の全体は「日本人の肥満と遺伝子の研究」にまとめています。
「縄文人の遺伝子」の話を読むとき
倹約遺伝子の話には、「縄文時代の暮らしで受け継がれた」という説明が添えられることがあります。dNAXY neo の「検査結果の根拠」に載せた研究は、どれも今の日本人の型と体重を調べたものです。昔の人の遺伝子を調べた研究ではありません。
縄文時代の人がこの型を多く持っていたかや、その理由について、公式の資料や論文の抄録で確かめられた数字は見つかりませんでした。研究で言えるのは、今の日本人で ADRB3 の型を持つ人が比較的多いこと、そして型による BMI の差が小さいことまでです。
型を知って、糖質の目安に使う
dNAXY neo の結果レポートでは、ADRB3 の型を「糖質での太りやすさ」として危険度1〜3で示します。Arg を2つ持つ人は危険度3で、糖質の目安は「ひかえめ」です。料理の辞書の1人分では、牛丼が701kcalで炭水化物90.3g、鉄火丼が403kcalで75.3g、ごはん1杯が234kcalで55.7gです。丼ものは、ごはんの量を減らすだけでも炭水化物が下がります。
検査は、綿棒で頬の内側をこすって送る方式です。検体の到着から約2週間で、ADRB3、UCP1、ADRB2 の3つの遺伝子の結果レポートが開けます。価格は9,350円(税込・送料込み)で、結果が出た日から30日間は、遺伝子タイプに合わせた1週間の献立と食事の判定を使えます。
出典
文責
dNAXY neo 編集部(株式会社tatepass)

担当ペルソナ: 佐々木 英樹(遺伝子検査)
遺伝子と遺伝子検査の記事を担当します。検査でわかることとわからないことを分けて、根拠の研究とあわせて説明します。
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