日本人の肥満と遺伝子の研究:3つの遺伝子でわかっていること
2026年10月7日
文責: dNAXY neo 編集部(担当ペルソナ: 佐々木 英樹)
日本人の研究で肥満との関連がいちばんはっきりしているのは ADRB3 で、6,582人をまとめた解析で、この型を持つ人の BMI がわずかに高い傾向が出ています。UCP1 は閉経前の女性で関連が見られた一方で若い男性では見られず、ADRB2 は4,193人の研究で、この型だけでは関連が見られませんでした。
この記事では、dNAXY neo が「検査結果の根拠」のページに載せている日本人の11の研究を、遺伝子ごとにまとめます。数字は PubMed の抄録で確かめました。
なぜ日本人を対象にした研究を見るのか
同じ遺伝子の型でも、持っている人の割合は人種や地域で違います。たとえば ADRB3 の Trp64Arg という型は日本人に比較的多く、Kurokawa らはそれを理由に日本人の研究に絞って解析しました。ほかの国の研究の結果をそのまま日本人に当てはめられるとは限らないので、dNAXY neo の根拠のページは、日本人を対象にした査読付きの論文を中心に選んでいます。
ADRB3(糖質):5つの研究のうち3つで関連
ADRB3 は、結果レポートの「糖質での太りやすさ」に使う遺伝子です。日本人の研究は5つあります。
| 研究 |
対象 |
結果 |
| Kurokawa ら(2001年) |
35の研究グループ、計6,582人 |
この型を持つ人の BMI が平均 0.26 kg/m² 高かった |
| Sakane ら(1997年) |
肥満の2型糖尿病の女性61人 |
12週間の減量で、この型を持つ人は体重の減りが小さかった |
| Shiwaku ら(2003年) |
閉経前後の女性76人 |
3か月の指導で、この型を持つ人は体重が減りにくかった |
| Miyaki ら(2005年) |
男性295人 |
摂取エネルギーが多い人でだけ、肥満の割合が高かった |
| Kuriyama ら(2008年) |
中年の37人 |
6か月の指導で、体重の減り方に差はなかった |
BMI の差の平均 0.26 kg/m² は、身長170cmの人の体重にすると約0.75kgです。減量の研究は数十人規模で、結果が分かれています。遺伝子そのものの説明は「ADRB3(β3アドレナリン受容体)遺伝子とは?肥満との関係」に書きました。
UCP1(脂質):女性と男性で結果が分かれる
UCP1 は、結果レポートの「脂質での太りやすさ」に使う遺伝子です。日本人の研究は3つです。
| 研究 |
対象 |
結果 |
| Matsushita ら(2003年) |
女性312人 |
閉経前の女性で、この型を持つ人は BMI と4年間の体重の増え方が大きかった |
| Kogure ら(1998年) |
肥満の日本人 |
ADRB3 の型と組み合わさると減量の効果が小さくなる、と報告した短報 |
| Shihara ら(2001年) |
若い男性349人 |
BMI との関連は見られなかった |
Matsushita らの研究でも、閉経後の女性182人では BMI の差は見られていません。女性の研究の中身は「日本人女性の遺伝子と体重の研究:閉経の前と後で何が違うか」で説明しています。
ADRB2(たんぱく質(筋肉)):単独では関連なし
ADRB2 は、結果レポートの「筋肉の付きにくさ」に使う遺伝子です。日本人の研究は3つで、2つが関連なしの結果です。
| 研究 |
対象 |
結果 |
| Pereira ら(2011年) |
中高年の4,193人(女性1,911人、男性2,282人) |
この型だけでは、BMI や肥満との関連は見られなかった |
| Hayakawa ら(2000年) |
男性210人 |
肥満との関連は見られなかった |
| Tsunekawa ら(2011年) |
222人 |
ADRB3、UCP1 の型と組み合わせると、ウエストとヒップの比との関連が見られた |
根拠のページでは、ADRB2 を3つの中で根拠が最も弱い項目に位置づけました。
11の研究から言えること
11の研究を並べると、ADRB3 と UCP1 では、集団の平均で見た小さな差が報告されています。ただし、対象の性別や年齢、食べる量によって、関連が見えたり見えなかったりする段階です。
研究の対象にも偏りがあります。数千人規模の研究は ADRB3 の解析と ADRB2 の研究の2つだけで、ほかは数十人から数百人です。女性だけ、男性だけを調べた研究も多く、その結果がもう一方の性別にも当てはまるかは確かめられていません。男性の研究については「男性もダイエットの遺伝子検査は役立つ?日本人男性の研究」にまとめました。
結果レポートでの使い方
dNAXY neo の結果レポートは、3つの遺伝子の結果を、項目ごとの危険度1〜3で示します。研究の差が小さいことを踏まえ、結果は糖質と脂質のどちらを先に控えるかを決める目安として使います。
たとえば糖質が危険度3で脂質が危険度1の人なら、まず主食の量から見直すのが目安です。料理の辞書では、ごはんを使う親子丼は1人分598kcal、炭水化物88.1gです。脂質が危険度3の人なら、鶏の唐揚げ(326kcal、脂質24.2g)を鮭の塩焼き(152kcal、脂質8.9g)に替えるような選び方が目安になります。
検査は綿棒で頬の内側をこすって送る方式で、価格は9,350円(税込・送料込み)です。結果レポートの一例は「結果レポートのサンプル」で見られます。
出典
- Kurokawa N, et al. Obes Res. 2001;9(12):741-5.(PubMed 11743057)
- Sakane N, et al. Diabetes Care. 1997;20(12):1887-90.(PubMed 9405912)
- Shiwaku K, et al. Int J Obes Relat Metab Disord. 2003;27(9):1028-36.(PubMed 12917707)
- Miyaki K, et al. J Epidemiol. 2005;15(6):203-10.(PubMed 16276029)
- Kuriyama S, et al. Metabolism. 2008;57(11):1570-5.(PubMed 18940396)
- Matsushita H, et al. Maturitas. 2003;45(1):39-45.(PubMed 12753942)
- Kogure A, et al. Diabetologia. 1998;41(11):1399.(PubMed 9833952)
- Shihara N, et al. Int J Obes Relat Metab Disord. 2001;25(6):761-6.(PubMed 11439286)
- Pereira TV, et al. Obesity (Silver Spring). 2011;19(7):1523-7.(PubMed 21233812)
- Hayakawa T, et al. Metabolism. 2000;49(9):1215-8.(PubMed 11016907)
- Tsunekawa K, et al. Endocr J. 2011;58(12):1079-86.(PubMed 21959333)
文責
dNAXY neo 編集部(株式会社tatepass)

担当ペルソナ: 佐々木 英樹(遺伝子検査)
遺伝子と遺伝子検査の記事を担当します。検査でわかることとわからないことを分けて、根拠の研究とあわせて説明します。
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