UCP1 が倹約遺伝子と呼ばれる理由:熱をつくる力と体重の話
2026年10月7日
文責: dNAXY neo 編集部(担当ペルソナ: 佐々木 英樹)
UCP1 が倹約遺伝子と呼ばれるのは、熱を作るたんぱく質の遺伝子で、はたらきが弱い型の人は熱として使うエネルギーが少なく、そのぶん体にためやすいと考えられたためです。倹約遺伝子は仮説から生まれた呼び名で、ADRB3 も同じように呼ばれることがあります。
研究で確かめられているのは、UCP1 の型と BMI や体重の増え方との関連までで、その結果も研究ごとに分かれたままです。この記事では、呼び名の理由と、dNAXY neo の根拠のページに載せた研究の範囲を説明します。
熱を作ることは、エネルギーを使うこと
体に入ったエネルギーは、体を動かすことや体温を保つことに使われ、残りが体脂肪としてたまる、という流れです。UCP1 が作るたんぱく質は褐色脂肪細胞のミトコンドリアにあり、脂肪などから得たエネルギーを熱に変えます。熱を作ることは、エネルギーを使う道の1つです。
この道が細いと、使われずに残るエネルギーが多くなるはずだ、というのが「倹約」という呼び名の考え方です。UCP1 のはたらきそのものは「UCP1 遺伝子とは?熱をつくるたんぱく質のはたらき」、褐色脂肪細胞については「褐色脂肪細胞とは?」で説明しています。
倹約遺伝子は仮説の言葉
倹約遺伝子という言葉は、食べ物が少ない時代にはエネルギーをためやすい体質が生き残りに有利だった、という仮説から生まれました。仮説の中身と反論は「倹約遺伝子とは?飢えに備える仮説の中身と今の考え方」で扱っています。
この言葉は、決まった1つの遺伝子の名前ではありません。エネルギーをためやすくすると考えられた遺伝子の型が、研究者や検査の説明の中でそう呼ばれてきました。dNAXY neo の結果レポートの「遺伝子検査について」の章にも、肥満遺伝子は倹約遺伝子とも言われる、という説明があります。
研究の論文での呼ばれ方
UCP1 の -3826A>G という型で倹約型とされるのは、G の並びです。札幌医科大学などの研究グループが2017年に出した日本人60人の論文(Mikami ら)は、題名の中でこの G を「thrifty allele(倹約型の遺伝子の並び)」と書いています。
ADRB3 も同じように扱われてきました。Groop(1999年)の総説は、倹約遺伝子の候補の1つとして、β3アドレナリン受容体の遺伝子を挙げています。ADRB3 は、脂肪の分解や熱を作る合図を受け取る受容体の遺伝子です。
熱を作る力の差は、確かめられているか
呼び名どおりなら、G を持つ人は熱を作る力が弱く、エネルギーを使う量が少ないはずです。ただ、その差を人で確かめた結果はそろっていません。
京都府立医科大学のグループの短報(Kogure ら、1998年)では、肥満の日本人女性113人で、年齢、性別、除脂肪体重で調整した安静時のエネルギー消費量を測っています。UCP1 の3つの型のあいだで、この値はほぼ同じでした。著者らは、減量の幅に差が出たしくみを、食事のあとの熱の作り方が低いことに関係するのではないかと書いていますが、推測の段階だとしています。
京都大学のグループ(Shihara ら、2001年)は、若い日本人男性349人で、体温の調節に関わる交感神経のはたらきを調べました。G/G の人で低い値が出たのは、ADRB3 の型も持つ人に限られています。UCP1 の型だけでは、自律神経のはたらきに影響しないという結論でした。
根拠のページの3つの研究の範囲
dNAXY neo の「検査結果の根拠」のページには、UCP1 の型について日本人を対象にした3つの研究を載せています。
| 研究 |
対象 |
結果 |
| Matsushita ら(2003年) |
日本人女性312人 |
閉経前の女性で、G を持つ人は BMI と4年間の体重の増え方が大きかった |
| Kogure ら(1998年) |
肥満の日本人女性113人 |
ADRB3 の型と組み合わさると、減量の幅が小さかった |
| Shihara ら(2001年) |
若い日本人男性349人 |
BMI との関連は見られなかった |
Matsushita らの研究でも、閉経後の女性182人では、BMI の差は見られていません。3つとも数百人までの研究で、関連が見えたのは一部の条件の人です。数字の読み方は「UCP1 遺伝子の多型(-3826A>G)と体重」で紹介しています。
倹約遺伝子という呼び名は、G を持つ一人ひとりの体が使うエネルギーの量を測って付けられたものではありません。研究で見られたのは、G を持つ人の集団と持たない人の集団を平均したときの違いです。
結果レポートでの使い方
dNAXY neo の結果レポートでは、UCP1 の型を「脂質での太りやすさ」の項目として、危険度1〜3で示しています。G を持たない A/A が危険度1、1つ持つ A/G が危険度2、2つ持つ G/G が危険度3です。脂質の食事の目安は、順に「いつもどおり」「ややひかえめ」「ひかえめ」になります。
検査は綿棒で頬の内側をこすって送る方式で、価格は9,350円(税込・送料込み)です。検体の到着から約2週間で、UCP1 を含む3つの遺伝子の結果レポートが開けます。結果が出た日から30日間は、遺伝子タイプに合わせた1週間の献立と食事の判定も使えます。
出典
文責
dNAXY neo 編集部(株式会社tatepass)

担当ペルソナ: 佐々木 英樹(遺伝子検査)
遺伝子と遺伝子検査の記事を担当します。検査でわかることとわからないことを分けて、根拠の研究とあわせて説明します。
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